呉真由美著『スポーツ速読完全マスターBOOK』(扶桑社)

本書は速読について書かれた本である。速く読むとはどういうことなのか、ということから、速く読めるようになるためのトレーニング法まで網羅されているので、本を速く読みたいと思っている人にとっては最適な1冊である。

本書によると、速読はテクニックではなく、脳が活性化して自然と速く読める状態になることとしている。脳を活性化させるというのは、脳がもともと持っている高い情報処理能力を日常的に発揮できるようにするということである。こうして脳の高い情報処理能力を引き出すことで、本に書かれていることが今まで以上に速く理解できるというわけである。

速読トレーニングよって脳が活性化されると、速読ができるようになるだけでなく、あらゆる場面で応用がきくようになる。その一例としてあげられるのがスポーツである。野球であれば時速150kmの速球を打てるようになったり、守備でもこれまで捕れなかったボールが捕れるようになる。これらも脳の活性化により、飛んでくるボールを目で確認してから、バットを振ったり、ボールを捕りにいったりといった動作に移るまでの速度が上がるためである。

もちろん、仕事においても速読による脳の活性化の効果はある。仕事の段取りがきちんとつけられるようになったり、大量のメールや資料も短時間で処理ができるようになり、仕事の効率を上げることができる。

本書を読む前は、ただ本を速く読むことができればいいと思っていたが、まさか速読による脳の活性化が日常生活の様々な場面で応用がきくとは思わなかった。速く読むためのテクニックを紹介した本は過去にも読んだことがあるが、速読による脳の活性化が色んな場面で応用ができるということにまで言及している本は珍しい。しかも野球やソフトボール経験のない著者が実際に150kmの球を打つことができているという事実が説得力を増している。

とはいえ、やはり本書は150kmの速球を打ちたいという人ではなく、読書好きな方や、仕事で大量の書類の目を通さないといけないという方におススメしたい。好きなことはもちろんだが、必要にせまられてという理由も意外と上達につながるからだ。

ちなみに私はかつてバッティングセンターに一度だけ行ったことがあるが、すべて豪快に空振りをしたという苦い経験がある。本書で速読のトレーニングをして、リベンジを果たそうとひそかに思っている。