平康慶浩著『出世する人は人事評価を気にしない』(日経プレミアシリーズ)

本書は人事コンサルタントをしている著者が、出世している人に共通している行動(仕事の進め方、人づきあいの方法、プライベート)について解説したものである。似たような書籍は他にも多数あるが、これまで130社以上の企業で人事制度構築に携わってきた著者が昇進にどんな判断基準が用いられるのかを語っているのが本書の大きな特徴である。

一般的に、出世とは仕事で実績をあげてきた人がするものというイメージがある。しかし、今している仕事で良い結果を残すことで昇進できるのは一般社員層までであり、課長や部長、役員への昇進へはまた違った基準で判断される。課長以上の役職に就くためには、目の前の仕事で結果を出すだけではだめなのである。

では課長や部長への昇進にはどのような基準が用いられているのだろうか。詳しくは本書にゆずるが、課長以上の役職への昇進は、それまでどれだけ実績を上げてきたかに加え、上位役職に求められる行動を取ることができているかということも判断される。本書では「入学試験」と「卒業試験」という言葉で説明されているが、課長の手前までは結果を残してきた人が卒業、課長から上へはその役職にふさわしい職務を果たすことができる人が入学できるのである。

私自身は新入社員時代は「出世したい」という願望はまったくなかった。しかし、10年以上会社員生活を続けていると、出世する人しない人の差が顕著に出てくる。出世がすべてとは思わないが、周りがどんどん出世していくなかで出世しないでいることは意外と辛い。今後を見据えると、業務を着実にこなすだけでなく、より高い目線で仕事をしないといけないと痛感した。その意味で本書の内容はとても参考になった。

会社の中で出世をしてより大きな仕事をしたいという上昇志向が強い人にはもちろんだが、仕事で結果を残しているのに出世できないという人にも本書はうってつけである。役職に応じて異なる昇格基準が用いられているということを知ることは、出世だけでなく仕事の取り組み方にも良い変化をもたらしてくれるだろう。