青野仲達著『グローバル時代を生き抜くためのハーバード式英語学習法』(秀和システム)

世界標準の英語力を身につけるためには、まず書く力を養うことが必要である、というのが本書の主張である。世界標準の英語力を身につけるにはもちろん文法や発音も大事であるが、英語学習のゴールとして最も重要なことは自分の考えを相手に伝えることができるかということである。そのために書く力をまず磨くことで、結果的に単語、文法、発音、会話力も同時に身につけることができるというわけである。

書く力というと、思わず身構えてしまうが、本書で紹介されているのはたった5行のエッセイを書くというとてもシンプルなものである。ただし、やみくもに書けばいいというわけではなく、そこには「3つのルール」が存在する。そのルールとは「最初に結論を述べる」、「その理由を3つ挙げる」、「最後にまた結論を述べる」というものである。このルールに従い、5行のエッセイを書くことで自分の考えを相手に伝えるトレーニングになるのである。

たった5行とはいえ、エッセイという言葉に拒絶反応を示す方がいるといけないので本書で紹介されている5行エッセイの1つを引用してみたい。(P7)

I like summer best.(私は夏が好きだ。)
The days are longer.(日が長い。)
We can dress down.(楽な服装ができる。)
I can travel with my family.(家族と一緒に旅行ができる。)
My favorite season is summer.(私の好きな季節は夏だ。)

英語が苦手な方でも簡単に感じる文章だと思う。(英語ができる人には接続詞がなく不自然な文と感じるかもしれないが、体裁の整え方も本書ではちゃんと説明されているので安心してほしい。)だが、こうしてエッセイを書くことが、やがて世界で通用する英語力を身につけるために役に立つのである。

日本人は英語ができないとよく言われているが(実際私もできない)、その根本的な原因はアウトプットの機会が少ないからだと思っている。学習してもその内容を使う場面がなければ身につかないのは当然である。私自身は道で迷っている外国人に積極的に話しかけたりして、英語を使うことを意識してはいるが、そういう機会も頻繁にあるわけではない。5行エッセイを使い、自分の考えやなぜそう思っているのかを書くということは、アウトプット不足のとても良い解決策になると思う。

本書では5行エッセイの書き方だけでなく、発音、会話、スピーチ、ディベート、論文などへの応用の仕方も丁寧の説明されているので、初心者だけでなく上級者にとっても非常に役に立つ内容となっている。英語力を身につけたいが、なかなか上手くいかないという方や勉強しているが伸び悩んでいるという方にはとてもお勧めできる1冊である。