ビートたけし著『間抜けの構造』(新潮文庫)

何とも言えない不思議な魅力がある。

それが北野氏の作品である
アウトレイジ
アウトレイジ ビヨンド』 
を観て思ったことである。

この何とも言えない魅力の正体は
なんだろうと考えたりもしたが
本書の監督自身の言葉により
わかった気がする。

以下引用(P139)

自分の言いたいことを、
相手に考える余裕を与えずに見せちゃうと、
一方的な押しつけになる。
でも、ある程度の”間”を与えれば、
あるレベルの人は考えるから。
それで「説明が少ない」とか言うバカは
放っておけばいい。
そういうやつは、さっきも言ったけど、
ハリウッドのエンタテインメントだけ
観ていればいいんだよ。

おいらはギャング映画でも暴力映画でも、
もうちょっと観ている方は
考えた方がいいと思っている。
考えさせるためには、
余韻や映像の美しさが必要で、
そうすると自然に”間”も決まってくる。
観ている人を思考停止に陥らせるような
映画を作ろうとは思っていない。

以上引用

北野映画の魅力は
監督自身が「間」を意識し、
セリフや映像で全部を説明せず
考える余裕を残していることから
生まれるものなのだろう。 

たしかにアウトレイジシリーズも
美しい映像(構図)で魅せ、
映像やセリフで全部を説明せず
「おや?これはどういうことだろう?」
なんて思わせる描写があったりして
観ている側があれこれ想像できる余裕があった。
そしてそういう「間」を設けることで
より映画自体がより印象深くなるのだ。 

余計なものはないけど
大事なことが欠けてもいない。

本書の中で監督自身が
「間」を制することは
人生のあらゆることにおいて
決定的に重要だと述べている。
でもこの「間」ってやつは
制するのはなかなか難しい。

その時その時で
ちょうどいい「間」は変わってくるし
普遍的な解などないから。

漫才だけでなく映画でも
「間」を制することで
高い評価を受けた北野監督は
やっぱり天才だ。

そんな監督の頭の中がのぞける本書は
ファンならずとも一読の価値あり。

間抜けの構造 (新潮新書)間抜けの構造 (新潮新書)
著者:ビートたけし
販売元:新潮社
(2012-10-17)
販売元:Amazon.co.jp
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