島地勝彦著『迷ったら、二つとも買え!』(朝日新書)

将来のために無駄遣いをやめて蓄えよう
と言う人が多い中で
著者のように無駄遣いを推奨する人は珍しい。
だが、私は著者の主張には大いに賛成である。

うまいものを食べ
熟成シングルモルトを飲み
上質なシガーをくゆらす。
そしてセンスの良い一級品を身につける。
そんな著者の「無駄遣い」はスケールが違い過ぎて
多くの人にとっては現実的ではない。
だけども身の丈に合った「無駄遣い」は
豊かな人生をおくるためには必要であると
私は思う。

私にはかつては貯蓄に励んでいた時期がある。
だが、目標があったわけではなく
ただ通帳に記載される金額が増えていくのが
うれしいというだけだった。

だから飲み会に誘われても行かなかったし
趣味や娯楽なども我慢して
貯蓄額を増やすことのみに専念していた。

今思い返すとこの時期に
ある程度貯蓄ができたのは良かったとは思う。
ただ、その時期の思い出がまったくなく
何のために生きていたのだろうかとも思うのだ。
20代の一番いい時期を貯蓄のためだけに
費やしたのかと思うと残念で仕方がない。

幸い、このままではダメだと気付けたので
今は身の丈にあった「無駄遣い」をして
自分になりに楽しい人生をおくっている(つもりだ)。 

自分が良いと思った服を着る。
読みたい本を読み
観たい映画を観る。
美味しいご飯を食べ
美味しいコーヒーを飲む。
昔は行かなかった飲み会にも行く。

まだまだスケールの小さい無駄遣いではあるが
貯蓄のために色んな事を我慢していた時期に比べると
段違いに楽しいのだ。

以前はお金を使うことは良くないことだと思っていたが
今では日々の暮らしを楽しむためにお金を使うことは
決して悪いことではないと思うようになった。

と個人的な話になってしまったが
最後に本書の中の著者の言葉を紹介したいと思う。

現状に甘んじる人生は愉しくない。
退屈な人生は大罪だとすら思っているわたしからすれば、
出来るだけ人生を面白くする工夫をする必要があるだろう。
何しろ、人生は冥土までの暇つぶしなのだから、
素敵な暇つぶしをすべきである。(P122)

色んなことを我慢して節約して貯蓄に励み
死ぬときに一番お金持ちになる人生。
そんな人生を送る人が日本では多いと言う。
価値観は人それぞれではあるが
著者のように人生を楽しむために無駄遣いをする
という考えはもっと一般的になっても良いのではないかと思う。

迷ったら、二つとも買え! シマジ流 無駄遣いのススメ (朝日新書)迷ったら、二つとも買え! シマジ流 無駄遣いのススメ (朝日新書) [新書]
著者:島地勝彦
出版:朝日新聞出版
(2013-06-13)