内館牧子著『カネを積まれても使いたくない日本語』(朝日新書)

本書を読む前は著者が
日本語の乱れを指摘するだけの本だと思っていた。
だが著者はただ日本語の乱れを指摘するだけではなく
なぜ日本語は乱れてしまったのかということにまで触れている。

今までそんなことは深く考えたことはなかったし
言葉の乱れは単に話す人の問題としか思っていなかったが
著者の主張は読んでいて目から鱗が落ちるようであった。

詳しい数値は本書を参照して欲しいが
2011年度の「国語に関する世論調査」の結果
「自分自身の言葉の使い方に気を使っている」
「ほかの人の言葉遣いが気になる」
と回答した人が8割近くもいたことがわかった。

こんなに多くの人が言葉遣いに気を使っているのに
なぜヘンな言葉遣いが広まるのか?
最初はそんな疑問が浮かんできたが
それはこの生きにくい世の中が原因だとわかり
納得がいった。

相手に嫌われないように
言質をとられないように
そんなことを気にしすぎるがゆえに
過剰にへり下る言葉を使ったり
断定せずにぼかす言葉を使うようになったのだ。

相手を思いやることはもちろん大事だが
だからと言って
ものごとをはっきり言うことはダメではないし
過剰にへり下った言葉を使う必要もない。
自分が何をどう思っているかは
はっきりと主張した方が良いし、
こんな言い方して大丈夫かな?と思っても
正しい言い方で堂々と話せば良いのだ。

著者も本書で述べているが
その方が相手にはずっと伝わると思うし
少しでもそういう言葉遣いをする人が増えれば
この生きにくい世の中が少しは良くなるかもしれない。

先にも述べたが
本書はただ日本語の乱れを嘆くだけでなく
(乱れた言葉遣いの例も豊富でそれだけでも参考になる)
なぜそうなったのか、そしてどうすべきか
ということにまで言及されているので
今一度、言葉遣いについて考えてみたい
という人にはとてもお薦めの一冊である。