槙田雄司著『一億総ツッコミ時代』(星海社新書)

これは非常に面白い1冊でした。

著者はマキタスポーツという芸名で
活動しているお笑い芸人である。
(ミュージシャン、コラムニスト、俳優として活動も)

本書ではそんな著者が
日本に漂う閉塞感の原因と
それを打破するための生き方を
お笑いのボケとツッコミという
ユニークな視点を用いて
語っている。

これが面白いだけではなく
的を射ており
「オフィス北野の最終兵器」のすごさを
実感させられた。

現在はツッコミ志向の人が増え
まさに「一億総ツッコミ時代」と言える。
ゆるさが失われ
他人の失敗に寛容になれず
政治家の失言や企業の不祥事から
芸能人の色恋沙汰にまで過剰反応して
ツッコミ(批判や批評)を入れる。

また知人間でも
会話の途中で噛むと
「噛んだね」とツッコミを入れる。
(個人的にはそんなことで
話の腰を折られるのは好きではない。)

著者は
ネットの普及がこうした現象に
拍車をかけたと分析しているが
まさしくその通りだと思う。

そんな社会だから
人々はツッコミを恐れ
言いたいことを言えなかったり
思い通りに行動できなかったりして
それが息苦しさにつながっている。

そんな息苦しいこの世の中を生き抜くには
「ツッコミ志向」から「ボケ志向」になり
「メタ」から「ベタ」に転向せよ
と著者は説いている。

要は
主体的、主観的に行動する。
そして冷静に事態を眺めるのではなく
どんどん行動して何事も楽しむ。
ということであるのだが
これは本当にそうだと思う。

自分の大切な時間を
人にツッコミを入れることなんかに
費やすのはもったいない。

他人からどう思われるかなんて気にせず
「ボケ」で「ベタ」な生き方をして
人生を思い切り楽しんだ方が良い。

それでツッコミを受けることもあるだろうが
著者の言葉を借りると
そうしてツッコミを受けることが
自分の成長につながるので
むしろ喜ばしいことなのかもしれない。

以下引用。

自分探しを自分の中で続けるのではなく、
今の自分を世の中にぶつけてみる。
そこで叩かれたり、削られたりしながら、
自分を形成していくのです。
そのままの自分を出すことは「ボケ」です。
そしてまわりの「ツッコミ」を受けながら、
自分という作品を形作っていく。
人はそうやって成長していくのです。

以上引用。

著者の視点がユニークでありながら
その主張が鋭くて
思わず膝を打ってしまう1冊。
非常にオススメ。

一億総ツッコミ時代 (星海社新書)一億総ツッコミ時代 (星海社新書)
著者:槙田 雄司
販売元:講談社
(2012-09-26)
販売元:Amazon.co.jp
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